ねー、起きてよぉ

キィラの朝は、めちゃくちゃ早い。
5時だよ、5時。
キィラと一緒に寝るのは、いつもじぃちゃん。
理由は簡単、1階で寝てるのはじぃちゃんだけ、だからだ。
じぃちゃんはキィラのため、襖をちょっぴり開けたまんま、寝る。
だからキィラは、目が覚めたら、とっとと部屋を出て行くべきなんだ。
でも、キィラは寂しい。
寂しいから、じぃちゃんをナメる。
足の指をペロペロ、手をペロペロ、それからおもむろに、顔に近づく。口元をペロペロ、鼻の頭をペロペロ。
にゃおん、と小さく鳴いてみたりもする。
いくらなんでも、ここまでされたらフツー目が覚めるよ。
もちろん目敏いじぃちゃんは、とっくに起こされてしまっている。けど、眠くてたまんないから無視する。寝てしまおうと努力する。
寝返りを打ちながら、ああーもぉ! と唸っているかもしれない。
やがて「うーうーうー」という文字でじぃちゃんの頭ん中がいっぱいになってしまったころ、母さんが起きてくる。
台所に立って、コーヒーを煎れはじめる音がする。
匂いが、襖の隙間を通って、すぐ隣のじぃちゃんの部屋まで漂ってくる。
じぃちゃんは、「はあー」とひとつため息なんかついて、身を起こす。
老眼鏡片手に部屋を出て、郵便受けの朝刊を持って台所のテーブルにつく。
すでに朝食の用意がされている。
朝はお茶漬け。
しゃばしゃばしゃばー、の音を背に、キィラもドライフードを食べる。
箸を置いたじぃちゃんが新聞を開くと、朝の排便も済ませたキィラは、ちょこんとじぃちゃんの膝に落ち着く。
じぃちゃんは、いつの間にかそこにあるマグカップの熱いコーヒーをひと口飲んで、「ほぉー」と息を吐き、キィラを撫でる。
今夜こそ、こいつは閉め出して寝よう、と、また決意している。
コーヒーの香りに包まれて、じぃちゃんとキィラの時間はゆっくり流れる。

その2時間後。
キィラは2階の寝室に上がってくる。実は戸だって自分で開けられる。
目が覚めたらじぃちゃんが居なくて寂しくなったキィラは、寝ているわたしの足の指をペロペロ、にゃおん、ペロペロペロ…………
わたしは「うぅんー」と寝返りを打つ。

カテゴリー: 琥珀月 — きぃら 18:37